MP3とCDリッピングの昔話
MP3のおもいで
デジタルオーディオデータに対する圧縮フォーマット、その技術の中で一番最初に普及したのは、MP3 (MPEG-1 Audio Layer-3)でしょう。
1993年に MPEG-1 Audio LayerIII が、1995年に MPEG-2 Audio LayerIIIが発表され、ISO 11172-3で規格化されています。
私が最初に使ったのは Fraunhofer l3enc。
(https://en.wikipedia.org/wiki/L3enc を参考にしてください)
SparcStation5/sun4mは当時CD-DA読み出し可能なドライブを搭載していたのでリッピング、ビルドして1曲エンコードするのに1時間どころじゃない時間がかかりました。
そのときはMP3が普及するとは思わなかったですが、この時代のパソコン/WSの進化速度は今からしても異常でした。それから1年、1995年の終わりごろには、Gateway2000 P5-133マルチメディアなんてマシンを導入したら、エンコードが実用レベルに達してましたね。
CPU: Intel Pentium 133MHz
OS: Windows95
HDD: WD Cavier AC21600
ただし、USB 1.1より前の時代なのでUSBメモリみたいなものはなく、CD-Rドライブも付いてなかったので、データを持ち歩くことは難しく、PC内に入れっぱなしです。
フラウンホーファーIIS と トムソンがエンコーディング機能を持ったソフトウェアに対してライセンス実施料をとるぞって言い始めたのが98年、それに反発して ISO化で公開されていたソースコードから、LAMEエンコーダーが生まれ、IA32の MMX/3D NOW!/SSEなどの拡張命令セットに特化した高速化が行われました。
上で書いた CD2WAV32 は、LAME3.88から分岐した午後のこ~だ に対応してましたので重宝しましたよ。
午後のこ~だの更新が止まってもう10年になりますが、本家LAME (The LAME Project, http://lame.sourceforge.net/ )は改善が続き、今は v3.99.5です。
いまでこそ MP3を使いたいという人は減っていると思いますが、当時はロスレスにしたくても、
CPUパワー、HDD容量、HDD転送レートのすべてがダメでしたから、MP3が限界でした。
CDリッパ-
いまでこそ、iTunesやxアプリなどでCDリッピングが簡単にできるようになりましたが、昔は大変でした。
CD-DA読み出し機能がないのでアナログレコーディングしかない
その昔東芝他のベンダーユニーク実装として存在してたりしたものの、一般にはオーディオインターフェイスを経由してAD変換するしかありませんでした。
CD-DA読み出し機能が付きましたが、最初は不安定
SCSI-2 や ATAPI CDでCD-DA読み出しが可能になって、WindowsのCDプレイヤーにも デジタル再生オプションが付いたものの、バッファアンダーランで音が切れるとかいろいろ不具合があり、その後マシンパワーを含めてまともに使えるようになったのは 1999年ごろと記憶してます。
CD2WAV32
普通に読み出しできるようになった 2001年頃には、
CD2WAV32 for Windows95/98/NT4.0/2000/XP (もろぼし☆らむ さん作, http://elfin.sakuratan.com/delphi.html )を使って CDデータをエンコードしてました。
CD2WAV32はMP3エンコードについて、
・ACMエンコーダ
・外部エンコードプログラム
・午後のこーだdll
で変換できます。
CDDBとの連携もあって使いやすいのと、リードエラーのリカバリの指定ができる便利なリッパ-です。
読取におすすめドライブなど
ドライブからデジタルデータで読み出すのだから全部同じでは?と思われるでしょうけど、CDのフォーマットは同心円状ではなくアナログレコードのようにスパイラル状に記録されています。
ある程度のエラーについては訂正コードが働きますが、それを超えると無視します。
もう随分昔のドライブになりますが、TEAC CD-540E, CD-532E, CD-532S 、あとは プレクスターがおススメでした。
これらのドライブはCDの回転を安定させるスタピライザーの出来が良かったことが最大の理由です。
TEACのCD-ROM傑作! - CD-540Eのレビュー | ジグソー
このころのTEACは非常にいいドライブメーカーでした - CD-532Eのレビュー | ジグソー
なお、CD-540Eは外部にS/P-DIF出力可能です。
MP3のACMエンコーダ
Windowsの オーディオ圧縮マネージャ(ACM) CODECとして、フラウンホーファーIISのライセンスを受けた MP3エンコーダ (Fraunhofer IIS MPEG layer-3 コーデック)が入っています。
しかしながら、Windows Vista/7に導入されている L3codeca.acm については
「L3codeca.acm を使用して、Windows Vista および Windows 7 では、MP3 コンテンツを作成することはできません。」
http://support.microsoft.com/kb/937141/ja
とあるように、L3codeca.acm はサードパーティアプリケーションから使用することはライセンス制約に抵触します。
あと、Windows Media Player 12が動作している環境には、L3codecp.acm も存在してますが、こちらも同様にライセンス制約に引っかかります。
MP3の特許については次の項で書きますが、CD2WAV32を含むサードパーティアプリケーションでは、ACMコーデックを使うよりは LAMEを使った方がよさそうです。
日本における MP3ライセンス の状況
MP3ライセンスに関する特許ポートフォリオを見てみましょう
http://mp3licensing.com/patents/index.html
日本国内で出願、特許権設定されたものは次の通りです。
特許期限で一番遅いものが2017年4月23日ですので、あと2年9か月はライセンス実施権が存続しますね。
Audio signal transmission method using a variable masking threshold
特許 2792853 特開昭63-007023 オーディオ信号の伝送方法及び装置
出願日 1987-05-29
Process for reducing frequency interlacing during acoustic or optical signal transmission and/or recording
特許 3640666 特表平07-504300 音響的又は光学的信号を伝達及び/又は記憶する際の周波数クロストークを減少させる方法
出願日 1992-10-06
Method of transmitting an audio signal using two different masking thresholds
特許 2801197 特開昭63-200633 デジタルオーディオ信号の伝送方法
出願日 1988-02-01
Method of reducing data in the transmission and/or storage of digital signals of several dependent channels
特許 3421726 特表平07-501190 複数の依存し合うチャネルのデジタル信号を伝達及び/又は記憶する際にデータを減少させる方法
出願日 1992-10-13
Method of transmission of an audio signal using grouping of amplitude values
特許 1814067 特開昭61-201526 オーデイオ信号の伝送方法
出願日 1986-02-27
Digital encoding process
特許 2739377 特表平04-504936 デジタル式コード化方法
出願日 1990-04-12
Method for transmitting a signal using adaptive window functions
特許 3187077 特開平04-233836 オーディオ信号のコード化方法及び装置並びにデコーディング法及び装置並びに伝送方法
出願日 1991-06-28
Process for transmitting and/or storing digital signals for multiple channels
特許 3792250 特表平08-505739 多チャンネルのデジタル信号を送信及び/又は記憶する方法
出願日 1993-11-02
Method for transmitting a signal using analysis and synthesis window function
特許 3065343 特表平04-505393 信号伝送方法
出願日 1990-05-17
Channel extension digital audio
日本での出願なし
Method for transmitting an audio signal using adaptive window functions
特許 3226537 特表平03-503829 オーディオ信号の符号化方法、オーディオ信号の復号化方法、オーディオ信号の伝送方法、及び各方法を実施するための記録装置
出願日 1990-01-26 で、出願日から20年経過してます。
Process of low sampling rate digital encoding of audio signals
特許 3103382 特表平11-507198 低サンプリング・レートでデジタル化されたオーディオ信号を符号化する方法
出願日 1997-02-19
Process for reducing data in the transmission and/or storage of digital signals of several interdependent channels
日本での出願なし
Digital coding process
特許 2796673 特表平01-500695 ディジタル・コード化方法
出願日 1987-08-29
Joint stereo coding
特許 3193921 特表平09-505193 複数のオーディオ信号を符号化する方法
出願日 1995-02-02
Method for encoding a digitized audio signal using combinations of different threshold models
出願番号 1997-106182 特許 4173209 公開 1998-093441 ディジタル化されたオーディオ信号の符号化方法及び装置
出願日 1997-04-23
Method for transmitting a TDAC coded encoding signal
特許 3222130 特表平05-502984 オーディオ信号の符号化方法、ディジタルオーディオ信号の伝送方法、復号化方法、及び、符号化装置、復号化装置
出願日 1990-10-08
Determination of coding type
特許 2800068
特表平08-507424 少なくとも2つの信号を符号化するために選択される符号化のタイプの決定方法
出願日 1994-07-08
Digital adaptive transformation coding method
特許 2858122 特表平02-501507 デジタル適応変換符号化方法
出願日 1988-10-06
Process for the detecting of errors in the transmission of frequency-coded digital signals
日本では出願なし